Hoonitron は18インチのホイールを例にとっても、他のコンセプトカーに比べて比較的コンパクトなサイズに仕上がっています。その理由はケン・ブロック自らが提示した条件にありました。しかし、一見それほど小さく見えないのはマルコ・ドス・サントスのおかげです。「ホイールを大きく見せたくてリムを赤いリングでカバーしてみたら、最高の効果が表れました。」マルコ・ドス・サントスはこれまでにもアウディでいくつかのプロジェクトに携わった経験を持っています。アウディのデザインブランディングチームの一員として、34歳の彼は車両のラップのデザインを担当してきました。「我々は商品の視覚的言語を開発するとともに、コミュニケーションのグラフィックブラケットも成型しています。」ドス・サントスは当初、ハイデからこのプロジェクトに誘われたとき難色を示していたといいます。
「興味深いプロジェクトだとは思いましたが、正直言って非現実的だと思っていました。」その後、彼とハイデは今回のプロジェクトにおけるデザインの重要性や、過去と未来の融合について深く語り合いました。「どのデザイン要素が車のアイデンティティを確立させるのかを決めて、Audi e-tronらしいコミュニケーションの手法を模索しました。」特徴的なネオンレッドのフロントとリヤのスポイラーはダカールラリーカーや新しく開発されたF1プロトタイプでも見られるようにAudi e-tronのDNAに直結しています。「狙っている効果を達成する方法は、通常、複数存在します。その中でも車の重要な要素を隠すことなく、視覚効果を最大に引き出す方法を考える必要があるのです。」しかしHoonitronの場合はややアグレッシブで主張の強いデザインが求められていたといいます。「このようにリヤのスポイラーとフロントのスポイラーをサイドシルで繋げました。これによって車を前から見たときも後ろから見たときも、車全体から放たれるパワーが感じられます。」
様々な分野のエキスパートが情熱をかけて記録的な速さで開発に成功したAudi S1 e-tron quattro Hoonitronはまさに完璧な車だと言えるでしょう。それはネッカーズルムとインゴルシュタットの双方の拠点が認めています。ステファン・ムアワイスはケン・ブロックの影武者も務めたといいます。「彼と私は身長が同じなんです。彼の体型に合わせてスイッチやレバーやペダルを設定しなくてはなりませんでしたが、彼が来られないときは私が代わりになりました。だからこの車を運転できる人間はふたりいるんですよ。」ムアワイスはおどけてみせた。「ケン・ブロックと私です。」